表面処理加工

ステンレス表面処理

7つのステンレス表面処理で最適な品質をご提供します

ステンレスは、優れた耐食性、耐熱性、加工性、そして意匠性を持つ非常に多機能な素材です。当社では、ステンレスのこれらの特性を最大限に活かし、電解研磨、酸洗、不動態化処理などの多様な表面処理技術を駆使して、品質をさらに高めています。お客様の用途やご要望に合わせた最適な処理方法をご提案し、精密部品から建材用まで、幅広い分野に対応します。

電解研磨

ステンレスをリン酸主体の酸混合溶液に浸し、プラス電圧を加えて電流を流すことで、表面の微細な凹凸を優先的に溶解します。この電解研磨により、耐食性が向上し、滑らかで光沢のある表面を得ることができます。

特徴

電解研磨は、表面の汚れや異物を取り除き、汚れの付着しにくい滑らかな仕上げを実現します。さらに、表面にクロムリッチな酸化皮膜を成長させるため、ステンレス本来の耐食性を高めます。この処理は、複雑な形状の部品、線材、薄板、容器の内面など、機械研磨が困難な品物に最適です。ただし、大きな凹凸(うねり)は電解研磨だけでは除去できないため、鏡面光沢を得るには機械研磨との併用が推奨されます。

効果 光沢出し、耐食性、外観、洗浄性の向上

用途例

硝酸・フッ酸混合溶液に浸漬し、ステンレス表面を溶解。表面の汚れ、酸化皮膜、溶接スケールを完全に落としクリーンな表面にします。

酸洗

硝酸・フッ酸の混合溶液にステンレスを浸漬し、表面を溶解することで、汚れや酸化皮膜、溶接スケールを完全に除去し、クリーンな状態を作り出します。

特徴

酸洗は、電解研磨とは異なり、ステンレス表面の光沢を落として白い肌を作り出します。処理後は、表面が完全にクリーンになるだけでなく、新たに自然酸化皮膜が形成され、耐食性が素地よりも向上します。また、反射防止や表面粗さの向上といった機能的特性の改善にも効果を発揮します。特に、耐久性や清潔さが求められる製品に適しています。

用途例

ステンレス器物、医療器具、装飾品、建築用ステンレス部品、浄水機部品、その他溶接部のスケール除去、焼鈍品の酸化スケール除去など

不動態化処理

ステンレスを特殊な溶液で処理し、加工時に付着した鉄分などの異物を溶解除去します。その後、表面にクロム成分を濃縮した安定した酸化皮膜を形成し、耐食性に優れた表面に仕上げます。

特徴

不動態化処理によるステンレスの溶解はごくわずかであり、寸法や表面状態(光沢、粗さ)にはほとんど変化がありません。特にアルコール飲料容器や配管部品に適用することで、鉄イオンの溶出を防ぎ、味の劣化を抑える効果があります。

通常は脱脂したステンレス製品に不動態化処理を施しますが、溶接スケールが付着した部品では、酸洗でスケールを除去してから処理を行います。ただし、この場合、表面の光沢が変わる可能性がある点にご注意ください。

効果 耐食性の向上

用途例

ステンレス器物、医療器具、飲料容器など

TF処理(特殊不動態化処理)

当社独自のTF処理では、ステンレス鋼の表面にクロムリッチな酸化皮膜を形成し、耐食性を飛躍的に向上させます。特に、海洋環境で使用されるステンレス部品においては、耐塩水性を大幅に高める効果があり、過酷な条件下でも優れた耐久性を発揮します。

TF処理品の表面分析結果例

元素 生地(w/w%) TF処理後(w/w%)
75.94 39
クロム 13.14 25.09
酸素 2.52 33.32
炭素 6.78 1.28

走査型電子顕微鏡による表面分析結果(SUS440Cの素地とTF処理後を比較)
鉄に対するクロムと酸素の割合が大きく上昇します。

特徴

このTF処理は、寸法変化が0.5μ以下と極めて少ないため、精密部品にも適用可能です。また、耐食性を保ちながら、通常のカラーステンレスと同様の発色を実現できます。ただし、ベアリングのように異なる素材が組み合わされた状態で処理を行う場合、素材やロットによって色にばらつきが生じることがあります。皮膜を薄くすることで、ほぼ無色に近い仕上げも可能です。

効果 色付けによる外観向上、耐食性向上

用途例

リール用ベアリング、耐塩水が要求されるベアリング、釣り用金具、建築金物、自動車部品など

化学酸化発色カラーステンレス

ステンレス表面に透明な酸化皮膜を成長させることで、鮮やかなカラーを生み出し、金属の外観を一層美しく変化させます。

カラーサンプル

カラーサンプル
金属 備考
マルテンサイト系ステンレス ブラック SUS420、440など
ニッケルを含まない鋼種
フェライト系ステンレス ブルー、グレー、ブラック、ゴールド、マゼンタ、グリーン SUS430など
ニッケルを含まない鋼種
オーステナイト系ステンレスと比較すると色調が暗くなります
オーステナイト系ステンレス ブルー、グレー、ブラック、ゴールド、マゼンタ、グリーン SUS304、316など
ニッケルを含む鋼種

特徴

光の入射方向や見る角度によって色調が微妙に変化し、塗装では表現できない深みのある色を実現します。極薄の透明な酸化皮膜により、金属の下地が透けて見えるため、ヘアライン仕上げや鏡面仕上げなど、下地の質感を活かした発色が可能です。

さらに、染料や顔料による着色とは異なり、光による退色が一切なく、耐候性にも優れています。発色後も密着性が高く、折り曲げや軽度のプレス加工も問題なく対応可能です。抗菌性を備えているため、病院の手摺や内装など衛生面が重視される場所でも効果を発揮します。

また、発色後には硬膜処理を施し、耐摩耗性と耐食性を強化します。マスキング印刷やエッチングと組み合わせ、多色の模様を施すことも可能です。処理工程で6価クロムを使用していますが、最終製品の表面には残留しないため安心してご利用いただけます。

効果 色付けによる外観向上、耐食性向上

原理

ステンレス表面に10nm〜300nm程度の膜厚を持つ透明な酸化皮膜を化学酸化によって成長させることで、表面を鮮やかなカラーに変化させます。酸化皮膜自体は無色透明ですが、白色光が酸化皮膜の表面と金属との界面で反射し、その2つの反射光が干渉することで、特定の波長が強調され、色として目に見えるようになります。

この色は、酸化皮膜の厚さによって決まるため、皮膜の厚さを精密にコントロールすることで、狙った色を得ることができます。この発色原理は、シャボン玉や水面に浮かんだ油膜が虹色に見える現象と同じです。さらに、当社が開発した連続コイルライン発色技術を使用することで、長尺のコイル材にも均一な発色を施すことが可能です。

用途例

屋根材、壁材、建築金物、店内装飾、モニュメント、装飾品、照明器具部品、IT筐体部品、手摺、病院内装など

レーザーマーカーによる発色模様入れ

レーザーマーカーを使用して、ステンレスの素地や発色した製品に対し、エッチングや色抜き、さらには発色を施すことで、多彩で独自性のある外観を作り上げることが可能です。レーザーマーカーの利点として、自由自在に模様を変更できるため、デザインのバリエーションが広がります。多品種小ロットでの模様入れにも対応しており、カスタマイズ性に優れたこの技術は、お客様の多様なニーズに柔軟に応えることができます。ぜひお気軽にご相談ください。

その他のステンレス表面処理

当社では、金メッキ、(協力工場活用)ニッケルクロムメッキ(協力工場活用)、バフ研磨、ブラスト処理、ヘアライン処理、特殊研磨による微小バリ取りなど、特殊用途に対応した多彩な表面処理技術もご提供しております。また、特定のニーズに応じた技術開発協力も可能です。特殊な表面処理が必要な場合は、ぜひご相談ください。